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忠ちゃん奮闘記 / 1968 母に言った言葉 |
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めっき業を始めて何年か経ったある日、母に「もう少し待っての、その内に家に遊びに来た時泊まれる部屋を作ってあげる」と言った記憶がある。工場が手狭になった為、2階を住宅にし、1階の部屋は取り壊して工場の一部にしてしまったからである。母は「うん、
待っているわ」と言った。母は住宅を新築する前に亡くなってしまった。うそをつくつもりではなかった。受け取り手形が不渡りになったので、その年の計画を延期せざる得なかった。
いろいろ有って苦しい年でもあった。残念であった。昔から良く言ったものである。孝行したい時に親は無し、まさにその通りである。
もし新築し母の部屋を作ったとしても、泊まらなかったと思う。多分毎日暮らしている我が家が良いと言って帰ったと思う.そう言う母であった。いくら毎日美味しいものを食べてもらっても、大事にしてもやはり父と暮らした家、兄のいる我が家の方が落ち着くと言うのであろう。
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