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忠ちゃん奮闘記 / 1968 寒ぶな釣り |
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母が子宮癌にかかり一度良くなり家に戻ったことがあった。後で聞いた話であるが末期癌で手遅れであった。死ぬ前には一時的に良くなるみたいである。
しかし母は例外である、きっと良くなると思い、なんとかして病気が回復してほしいと思い、冬のある日、吉崎の北潟湖に釣りに行った。もちろん寒ぶな釣りである。
冬のふな釣りは経験がないし、しまみみずを付けて湖のほとりで釣りを始めたがなかなか釣れない。冬の魚は動きが悪い。棒で水面を叩いている人がいるので、私も試してみた。小魚ばかりであったが、よく釣れた。
後で分かったことであるが、もう少し深いところで釣れば大きいのが釣れたそうである。
でも喜んで家に飛んで帰り七厘の上で焼き母に食べさせた。すると母は「これで良くなるかのう」と言ったことを記憶している。今でも頭から離れない。昔から寒ぶなは体に良いと言われているからである。
寒ぶなの効果も無く、まもなく極楽より向かえが来たのである。母60歳、私29歳の時であった。
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