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43年の春頃だと思う。松原めっきの親方が、私が開業して初めて会社に見えた。6年振りの再会であった。
その時は新しい仕事も始まり、土地も少しづつ買い増し、お客様も多少増え、少しづつ軌道に乗ってきた時期である。親方は工場内を一回りして、事務所のソフアに座り「忠、今日まで良くがんばったな。うらはもう安心したわ」と言ってくれた。
私はその一言で松原めっきに勤めていて良かった。6年間何も言ってくれなかったが、心の中では心配してくれていたと思うと心に熱いものが流れた。親方より認めてもらうことは、自分の選んだ道は、間違っていなかったと思った。
松原めっきの親方は明くる年の3月にこの世を去った。
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