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息子たち 三男・忠幸の昔話 / 商品に対する思い |
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大学を卒業し、東京にある商社に5年間勤務した。「企業は人なり」とはよく言われるが、商社はまさにその通りであった。
製造をすることなく、物を右から左へ動かすことにより利益を得る商売である商社は、人が生命線であった。右から左へ動かす間に付加価値を付けていく。
付加価値とは何か。よく自問自答した。
価格が安いこと、実に不確定なことである。貴金属は、毎日価格が変動する。為替にも左右される。私の担当していた商売は、貴金属ほど価格が変動しない商品であったが時代の価格破壊の波に飲み込まれていた。どこもかしこも値段を下げ、シェアを広げようとする。しかし、価格だけで取った商売はすぐに取り返され、価格で取られた商売はすぐに取り返せる。ただ、付加価値の一つであることは間違いなかった。しかし、商品の寿命を長くしようとするには、最低もう一つの付加価値が必要である。それを、商品の中に送り込むことを考え続けた。
何でもかまわない。
そのことを考え続けることが大切であり、それが確固たる信念と生き生きとした商品を生むことだと思う。
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