めっき皮膜の密着性を評価する方法は、様々ありますが、いくつかをご紹介します。
その名の通り、テープを使用した試験方法です。
ざっくりとした手順としては、
①粘着テープを貼り付けない部分を 30∼50mm 残して、めっき面にテープをしっかり貼り付ける。
②貼り付けていないテープ部分を持ち、テープをめっき面に垂直になるように一気にかつ強く引きはがす。
③引きはがしたテープを確認し、めっきの付着があれば,密着不良と判定
です。
簡単にできますが、JIS H 8504に規定された正式な試験です。当社でもよく使っています。ちなみに、JIS H 8504に規定されている試験用テープは,JIS Z 1522 に規定された粘着テープ(粘着力は,幅 25mm 当たり,約 8N のもの)で,呼び幅 12∼19mm のものです。
より過酷な試験をする場合は、めっき面に素地まで達するように格子状の切れ込みを入れて、テープ試験を行います。
複数水準の処理条件を評価する際、剥がれたマス目の数や剥がれ方で優劣をつけることもできます。
試験装置を用いて、数値で密着強度を比較する試験方法として、引張試験があります。
めっき皮膜自体を引っ張って剥がすことはできません。そこで、めっき皮膜に、試験機で掴めるような線材などのピンを取り付け、それを引っ張ることで密着強度を測定します。
試験手順
①サンプルに線材を接合する。
②引張試験機で線材をチャッキングし、引っ張る
③引っ張って破断したときの力や、サンプルの破壊モードで、密着性を判断する。
製品:ネオジム磁石へのNiめっき
試験条件:30mm/min
測定結果:405.5N
破壊モード:めっきー素材間
この事例では、線材を引っ張って破断した際、素材が露出しており、めっきと素材の間で剥がれたことが確認できました。よって、めっきと素材の密着強度が測定されたことになります。
引張試験では、一番強度の弱い層で破断されます。よって、素材ー素材間で破断された場合には、めっきと素材との密着は、測定強度以上であると言えます。
はんだ接合されるめっき製品の場合、実際に使用されるはんだ材や熱処理条件を合わせて試験をすることで、より、実際の使用条件に近い評価を行う事もできます。
当社では小さい部品が多いので、行ってはいませんが、曲げ試験という試験方法もあります。
手順は、
①試料を図に示すように,曲げ半径 4∼10mm の当て金を使用してしっかりと挟み固定し,90°曲げる。
②元に戻す。
③試料を反対側に曲げる。
④元に戻す。この操作を,定められただけ繰り返し行う
⑤試験箇所を目視によって観察し,めっきのはく離又は膨れが明らかなときは,密着不良とする。
です。
他にも、押し出し試験ややすり試験法など、色々な試験方法があります。
今回記載した手順は、一般的な内容です。
実際には、この手順をそのまま行うだけでは、適切な評価にならないこともあります。
適切な評価には適切な試験条件の設定が必要です。
めっきの種類、製品形状、必要とされる密着状態によって、試験方法だけでなく、試験条件も異なります。
当社では、お客様の製品に応じて、評価方法をカスタマイズして評価を行っています。