めっき膜には”(内部)応力”と呼ばれる力が存在しています。
下図のように製品が上に引っ張られる方向に働く力を”引張応力”、製品が下に押し付けられる方向に働く力を”圧縮応力”と呼びます。
大きなボルトやナットへめっきする場合、多少めっきに応力があっても、さほど問題はないかもしれません。
しかし、ペラペラの薄いフィルムのような製品にめっきをする場合は問題となり得ます。
応力が大きいと、フィルムが応力の方向に反ってしまうことがあります。
フィルムへのめっきは、特に、医療業界やIoT関連を初めとした、多くの電気・電子製品でも使われています。
また、フィルムというと樹脂フィルムを思いますが、現在ではそれだけではありません。
半導体デバイスの作成のために用いられるシリコン系ウエハもフィルムのように薄くなっています。
部品自体も、小型化・薄膜化が進み、今後さらに加速する流れの中では、特にめっきの応力のコントロールが重要です。
めっきの応力を測定する方法としては、テストストリップによる開脚試験があります。
容易に測定できるため、当社でもよく行っています。
開脚試験は図1のようなテストピースに片面めっきを行い、めっき後のテストピースの開脚幅から応力を測定する方法となります(図2)。
めっき面側に反っていれば引っ張り応力、めっき面が丸まるように反っていれば圧縮応力となります。
めっき液によって応力の種類や大きさは異なります。
例えば、同じ電解ニッケルめっきでも、硫酸ニッケルベースのめっき液(ワット浴)は、引張応力を持ちます。一方、スルファミン酸ニッケルベースのめっき液(スルファミン酸浴)は、引張から圧縮まで調整可能な液です。
応力を調整する方法は、様々あります。
まず検討するのは、めっき膜厚の薄膜化です。応力はめっき膜厚が厚くなるほど大きくなります。
めっき液の組成や、めっき条件等で、理想の応力に近づけていける場合もあります。
当社では、めっき膜の持つ他の特性とのバランスも鑑みながら検討をし、最適なめっき皮膜を見つけていきます。